スタートアップ支援の専門家に聞く
「成功する起業家を選ぶ基準」とは?
スタートアップ支援の専門家に聞く「成功する起業家を選ぶ基準」とは?
今回は新産業創出を目指すスタートアップのための起業家コミュニティ「StarBurst」を運営されている、プロトスターCCOの栗島さんにインタビューをさせていただきました。
投資家、起業家としての立場でスタートアップ支援に携わってきた栗島さんから見たジーズアカデミー卒業生スタートアップの特徴や、StarBurstで支援する選抜スタートアップを見極める際の基準や、今後のスタートアップ市場の展望など、色々なお話を伺いました!
栗島祐介さん
Yusuke Kurishima
早稲田大学商学部卒業後、三菱UFJ投信に入社し、トレーダー・ファンドマネージャーを経験。その後、アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートナーズCEOを経て、起業家支援インフラを創るプロトスター株式会社(旧スパノバ株式会社)を設立し、起業家支援及び起業家育成エコシステム作りに邁進。起業家支援コミュニティ「StarBurst(旧Supernova)」の企画・運営統括を行う。
「エコシステムビルダー」という立ち位置で、スタートアップと投資家をひたすらマッチングさせる、という事業をやっています。
支援しているのは主に「ハードテック(HardTech)領域」のスタートアップです。
ひと言で言うと、「大きくて古い市場」です。レガシーな既存産業など、市場規模は大きいものの参入障壁が高い領域です。
そういった困難な領域に挑戦する場合、Web系と比べて模索期間が長くなるので、事業化やマネタイズまでに時間がかかります。
はい、期間が長くなる分、数千万単位のまとまった資金が必要になってきますが、ファンドには償還期限があるので、時間がかかる=投資がしにくいんです。
そこで大きくて古い産業で既存のIT技術を応用することで、新たな産業が作れるんじゃないか、という仮説を我々は持っていました。
投資家が集まりにくいということで、結果的に、挑戦者がほぼいないブルーオーシャンな市場が残ってしまっている状態になっていると考えています。
「適切なマッチングができていない」という課題感がずっとあって、それを解決するために、中立的な立場で、起業家と投資家をマッチングするハブになろうと考えて作ったのが、StarBurstです。
GEEK
AUDITION」に何回も足を運んでいただいていますが、他のスタートアップのデモデイと比較して、違いはありますか。
技術をしっかり見せるというのと、探求する姿勢があるということが特徴だと思います。
あとは自分の課題に基づいて、サービスを考えているというのも特徴かと思います。
ありがとうございます。
【選抜されたジーズ発スタートアップ】
・LandSkip(風景流通):世界の風景を指先ひとつで連れてくる
・woem(美容・製造・メディア):自分だけの美容コンシュルジュ
・ユリシーズ(食品工場・品質管理):テクノロジーの力でミライの食品工場を創る
・雷公鞭(小売流通・メディア):書店の手書きPOPをDB管理し、書店間で共有・実店舗AR表示サービス「popstar」
・東京ロケット(建築土木):建設業の現場と職人をつなぐアプリ「助太刀くん」
・ライトハウス(IoT・Robotics・漁業):データ漁業支援ツール・ロボット漁船
そうですね。ジーズアカデミーでは、ハードな領域にチャレンジしているスタートアップが多いというのが一つの特徴かと思います。
Web領域の事業であれば、受託をするなど、仕事をしつつ自然と学べる部分も多いのですが、事業化が難しい領域に挑もうとした時に、そういった人たちがジーズアカデミーしかないということで行き着く、という流れができているように感じます。
例えば一期生の下村さんが立ち上げたランドスキップは「風景の流通」を事業にしていますが、ジーズは初期の頃から、ランドスキップのように今までにない一風変わった領域に挑むベンチャーが多数出ていますよね。
ジーズアカデミーの象徴的なベンチャーがこういった「変わったもの」であることで、一般的なプログラミングスクールとは違う、というブランディングができているのだと思います。
人として切り拓くタイプかどうか」をまず一番に見ています。
基準としては以下の6つです。
1.複雑性を排除しない思考を持っていること(障害があっても切り開く必要があるが、その複雑性を分かった上でもやり切れるか)
2.思考と行動の両輪を回すことができる(仮説検証することができる)
3.長期的なプラットフォームを創る思考を持っている
4.商売っ気を持つこと 5.プライオリティを決められること
6.人として誠実であること
はい。技術があればもちろん良いですが、もともとビジネスサイドの考えがあり、そこに技術がアドオンされる・・・という捉え方なので、選定基準は技術依存ではないんです。
ビジネスモデルについては、門外漢の私達から見ていいものだと思ったとしても、実際のところ本当に良いビジネスかどうかは、やってみないとわからないです。
ただ、これらの基準を満たす、切り拓くことができるタイプの人であれば、初めはうまくいかなかったとしても、構造を理解していって、成功への道筋を見つけてくることができると思っています。
古くて大きい領域であればその余地が多く残っていて、優秀であればそれを見つけられるので、「人」を一番に見ています。
個人的な見解ではありますが、シリーズA・B(※)以降を支援していたVC(ベンチャーキャピタル)が淘汰されるのではと考えています。
代わりに、私たちのようなシード期(具体的なプロダクトやサービスにまだ落とし込めていない初期の段階)から支援しているところはものすごく強くなると思います。
※シリーズA・B
「シリーズA」は、第一回の資金調達ラウンド。(以降、B,C…と続く)
その理由は、初期の1〜2年はお客さんがいなくて売り上げが立たないので、投資家に株式を渡して現金をあずかる、というのをやりたいスタートアップは多く、5〜6年くらいは資金調達をしながら事業を回していく、というケースが多いからです。
従来は、株式を発行してそれを投資家に買ってもらう方法(IPO)が一般的でした。
それ以外に今は自分たちで仮想通貨を発行して資金を集める「ICO」という資金調達方法により、投資に参加するハードル、そして資金調達をする側のハードルも下がってきました。
一般投資家が増えることでプレーヤーの総数が増えますが、彼らは最初期の段階でビジネスモデルを判断するのは難しく、具体的なサービスやプロダクトがある、ユーザーがある程度いる、といった段階から参入してくるので、私たちのような初期の段階から支援しているところは有利になってくるのではないかと考えています。
以下の2つのパターンが増えてくると思っています。
①古くて大きい産業×テクノロジー
②受託現場の人が個人で作ったプロダクトで起業
の2パターンが伸びてくると思います。
①は、我々が主に支援している領域ですね。ジーズアカデミーでも、このタイプで起業されている方は多くいると思います。
②については、海外ではこのようなケースは多いのですが、日本ではまだ少ないですね。
アメリカでは7〜8割がBtoBで、日本では今はC向けのものが多いですが、今後はB向けのサービスも増えてくると思います。
BtoBサービスを作るにあたっては、技術を持っている人がやはり強いので、そういった人々がビジネス面を学ぶことができる体制もあれば、良いサービスは生まれやすいと思います。