【DEV卒業生インタビュー】
「やっぱり自分がやるしかない」
弁護士の山内さんが
法令リサーチツール
「SmartRoppo」を本リリース
するまで
山内 達也さん
Yamauchi Tatsuya
2014年に弁護士登録後、投資会社の社内弁護士として国内外のM&A、スタートアップ投資、各種ファイナンス案件などに従事。現在は都内の法律事務所で金融法務を中心に企業法務全般を取り扱う。2018年11月に週末集中DEVコース第12期生として入学し、2019年6月に卒業。2019年6月に開催されたGLOBAL GEEK AUDITION vol.12では弁護士業務を効率化する「SmartRoppo」を発表し、優勝。2023年5月にSmartRoppo株式会社を設立し、2024年3月1日、法務プロフェッショナル向け法令リサーチツール「SmartRoppo」の有償β版の提供を開始した。
卒業から5年を経てGGAで発表した「SmartRoppo」をローンチ
「SmartRoppo」は、法務プロフェッショナルの方々が、法令リサーチ業務の中で直面する課題を解決するWebサービスです。
金融規制法をはじめとするビジネス領域の法令に見られる課題として、法令が条文が極めて複雑でわかりにくいという問題があります。
何重にもなったカッコ書きや、用語の定義や参照情報が他の条文や下位規則に散在していて、それらに逐一アクセスしないとルールの正確な内容が分からないんです。
「SmartRoppo」は、国が公開している法令APIと、独自の法令データ解析技術を組み合わせることによって、この問題を解決しています。
そうなんです。法令を正確に早く読み解くことができるようにしたくて、このサービスを考えました。
アイデアを自分で実現するために入学
はい、プログラミングを学ぼうと決めた時点で、既に作りたいプロダクトのイメージは明確に頭の中にありました。プロダクトの骨格はその頃から一切ブレていません。
弁護士の仕事をされている中で、なぜご自身でプロダクトを開発されようと思われたのでしょうか。
自分が欲しいと思ったものが世の中に出てこなかったからですね。
弁護士業界に限らず、特定の業界にある程度長くいると、業務効率化系のプロダクトのアイデアの一つや二つくらい誰でも思い浮かぶものですが、ほとんどはアイデアや願望のまま終わってしまうケースが多いと思います。
そういう状況から一歩抜け出したいなと思い、まずは自分が欲しいプロダクトを自分の手で作ってみようと思うに至りました。
「やっぱり自分がやるしかない」本リリースまでの道のり
卒業後すぐに起業してサービスを提供するということもできたのではと思ったのですが、卒業後はどのようなことに取り組まれていたのですか?
2019年5月に卒業した後も集中的に開発し、2019年12月にプロトタイプを公表しました。
はい、でもそこで一旦は満足してしまって、本業も忙しくなったこともあり、しばらく放置してしまっていました。
2020年の夏ごろからコロナウイルス流行の影響で時間ができ、再度開発に取り組めるようになりました。
そこで、法令を解析するアルゴリズムを独自に開発し、バックエンドの処理まで概ねできたところで、また仕事が忙しくなり、開発が止まりました。
はい、そして2023年の年明け頃に優秀なエンジニアチームと偶然ご縁があり、本腰を入れて、一緒に作り込んできました。
エンジニアの方と本格的に開発に取り組むことを決意されたのはなぜでしょう?
一言で言うと、自分が欲しかったものがやっぱり出てこなかったからというのが、大きいですかね。
その上で、自分が熱烈に欲しいものであれば、結果的に、自分と同じような仕事をしているプロフェッショナルの方々にも使っていただけるのではないかと思っていました。
はい。けれども、これまで、自分が欲しいと思えるプロダクトはどこからもリリースされませんでした。技術的にも難しい部分があるので、出てこない理由も分かっていました。そうすると、ちょっとおこがましい言い方かもしれませんが、「やっぱりこれは自分がやらないと駄目かな」と思い始めたんです。勘違いかもしれないですが、やってみようと思いました。開発には資金も時間もかかりますが、お金は本業の方でまた稼げばいいだけですし、やらずに後で後悔するよりはマシかなと思いました。何より、どう転んでも死んだりはしないですからね。
ええ。また、プロトタイプを使ってくださった方から「このままお蔵入りは勿体ない」「正式版ださないの?」とちょくちょく連絡があり、このタイミングでいろいろできる環境が整ったので、やってみようかというふうになったって感じですかね。
法律とプログラミング、どちらも学んだからこそ実現できた。
例えば、利用料金の決済の機能などは、絶対に不具合があってはならない機能である一方、このプロダクトに特有の部分は少ないので、そこはエンジニアチームにお願いしました。また、フロントエンドの部分も、自分でやると時間がいくらあっても足りないので、実装部分は専門スキルのあるエンジニアチームにお願いしています。
ただ、エンジニアチームはとても優秀なメンバーがそろっており、密にコミュニケーションを取りながら開発を進めました。そのプロセスは非常に学びが多かったです。
プロダクトのキーバリューとなっている法令を解析してクロスレファレンス(相互参照)をつけるところですね。ここは、技術と法律どちらもわかっていないと作れない部分のため、基本となるアルゴリズムは私が考案しました。
プレスリリース:法務プロフェッショナル向け法令リサーチツール「SmartRoppo」、有償β版を提供開始より引用。
そうです。法律には本業で慣れ親しんでいるので、「こうすればできるでは?」という仮説は当初から持っていたのですが、そこにプログラミングの知識が合わさって、これまで実現できなかった処理方法を思いついたんです。それは、現在のプロダクトにも反映されています。根拠はないのですが、「この部分は、自分にしかできないのでは?」と感じ、自分で創り上げるしかないなと思いました。
今後実装したい機能はありますか?
まずは、既にユーザー様に要望いただいている機能を優先順位をつけて対応していこうとしているところです。
ただ、ご要望をそのまま受け入れるのではなくて、その要望の裏にあるニーズや課題を深堀して本質的な機能改善・機能追加を行っていきたいと思っています。
また、最近は生成AIが出てきたので、SmartRoppoが保有する法令のコネクテッド・データを活用して、独自のチューニングを施した生成AIを組み込んだりするのも面白いと思っています。
あくまで弁護士業が本業だと思っています。自分の仕事を効率化したくて始めたものなので、基本的には、本業に支障がない範囲で続けていくというスタンスです。
そのため、本業に支障がない範囲で続けていく予定です。
ただ、そうはいってもSmartRoppoのユーザー様に価値を感じていただけるよう、各種サポートや機能改善・追加を継続的に行える体制は維持していきたいと思っています。まずはお客様がついてくれることが大切なので、サポートや機能追加を進めていきます。
また、今後も法人のお客様が増えそうであれば、フロント(営業)を設けるなども考えていきたいと思っています。
ご自身の本業の課題感を基に自分でプロダクトを作ったところから、多くの方に必要とされるサービスをされた山内さん。
自分が欲しいプロダクトを自分の手で作ってみたい、アイデアをそのままにしておきたくないと思われている方は、ぜひジーズアカデミーでプロダクト開発に挑戦してみてください!