アイデアだけでは戦えない。起業家の必須スキルとは
※本記事は2021年1月にNewsPicksにて掲載された記事になります
VUCAと呼ばれる不確実な時代、ビジネスパーソンに必須のスキルとして「プログラミング」を挙げる人は少なくない。しかし、その知識はビジネスに実装されてこそ意味がある。
そこで注目されるのが、デジタルハリウッドが運営する、起業家・エンジニア養成プログラミングスクール『G's ACADEMY』だ。設立わずか5年で50組以上の起業家を生み出し、総額35億円もの資金調達に成功。今や1400名以上の起業家とエンジニアのコミュニティへと成長した。
なぜ『G's ACADEMY』は次々起業家を輩出することができるのか。起業家として活躍する卒業生らと、G’s ACADEMYファウンダーの児玉氏に聞いた。
プログラミングを習得することがゴールではない
「エンジニアや起業家など、モノづくりを通じて世の中に新しい価値を生み出す人を支援し、インキュベート(養成)するのがG’s ACADEMYです」
こう語るのは、G’s ACADEMY(以下、G’s)のファウンダー児玉浩康さんだ。
G’sはプログラミングスクールではない。ゆえに、生徒もプログラミングを習得するのがゴールではない。
G’sでは、事業メンタリングや卒業後の出資・投資の制度なども整備され、プロダクト発表会には投資家やベンチャーキャピタルが集う。徹底して「起業・事業立ち上げ」に特化した支援を行っているのだ。
では、G’sの卒業生は、どのような部分に魅力を感じ、その後どのように活躍しているのだろうか。
生き残るサービスを生み出すために必要な「Why me?」とは
九州を拠点に「キャンプ女子株式会社」を立ち上げたのは、橋本華恋さんだ。現在は、国内最大のキャンプ女子コミュニティ「キャンジョ」を運営しながら、キャンプ道具のレンタルサービスや、地方創生プロジェクトにも参画している。
キャンプ好きの橋本さんには、「キャンプ業界のIT化を推進したい」という強い思いがあったという。
「自治体が運営するキャンプ場の予約は、電話や封書がメイン。そんな手間がかかると、『これからはじめよう』という人たちは諦めてしまいます。簡単にネット予約ができて、HPで情報収集できるようになれば、日本のキャンプ人口はもっと増えるだろうと思ったんです」(橋本さん)
橋本さんがG’s ACADEMYを知ったのは、福岡市のスタートアップイベントだった。その場で児玉さんと面談をし、キャンプ業界のIT化構想について話した。
「でも、自分だけではどこからはじめればいいかわからない。エンジニアかプログラマーを雇えばいいのかなとぼんやり考えていたんですが、児玉さんに、『自分がつくりたいサービスは人に頼んでできるものではない』と言われたんです。ハッとしましたね。
G’sで自分が納得のいくサービスをつくろうと思い、入学を決めました」(橋本さん)
そんな橋本さんが大切にするのは、G’sが掲げるクレドのひとつ「Always Ask “Why me?”」だ。
Why me? ──直訳すると「なぜ私が?」となるが、児玉さんは次のように説明する。
「なぜ私がこのサービスを作るのか。『Why me?』と考え抜くからこそ、自分のコアに気づき、価値あるプロダクトが生み出せます。逆に、『Why me?』への答えがないプロダクトは完成にも至れないし、起業できないし、勝てません」(児玉さん)
Why me? ──橋本さんの場合は、「誰よりもキャンプが好きだ」という思いが答えにつながった。
キャンプ業界は、マーケットも伸びているし、多くの競合が存在する。しかし、「Why me?」をかけ合わせることでサービスに独創性が生まれ、解決策も見えてくるのだ。
「同期の中には答えが出せず苦労する人もいましたが、みんな考えて答えを出していました。G’sにいると『Why me?』と問いかけ続けることが『本当に生き残るサービス』を生み出すために必要なことだとわかるんです」(橋本さん)
起業家はなぜプログラミングを学ぶのか
「G’s ACADEMYの入試のために構想したソフトが、現在のサービスの基盤になっています」と語るのは、G’s一期生の中島貴春さんだ。
中島さんは「建設業界のスマート化」というミッションのもと、建設業界のITソリューションを提供する株式会社フォトラクションを創業し、100人以上のスタッフを抱える組織にまで育て上げた。
フォトラクションは、これまでに5万件以上のプロジェクトを支援。創業5年目には、2020年度「ベストベンチャー100(ベンチャー通信)」にも選出されている。
「大学時代も趣味でプロダクトを作るなど、小学生の頃からプログラミングは好きだったんです。
就職した建設会社では、ITを活用して工事現場や建設過程の効率化を推進する部署に配属されたのですが、ソフトの数はたくさんあっても、建設業にベストなものはない。自分の理想形を形にしたくて、プログラミングを体系的に学べるG’sに入学しました」(中島さん)
「Why me?」と考え抜くからこそ、価値あるプロダクトが生み出せる。そして、プログラミングスキルがあるからこそ、自分の理想のプロダクトをつくることができる。G’sに入学する人の多くが、プログラミングスキルを身につけることで、世界を変えたいと思っている。
中島さんは、プログラミングスキルを身につけることの、「その他」のメリットも指摘する。
「サービスに対して最も愛着がある創業者が、自分の手を動かして、その思いを形にする。これはとても意味あることだと思います。でも、もっと現実的な部分でのメリットも大きいんですよ。
たとえば起業となったとき、プログラミングスキルがあるのとないのとでは、一緒にやってくれるエンジニアの集めやすさが違います。また、プログラミングがわからないと、エンジニアとの共通言語がないからコミュニケーションも取れないし、制作過程が丸投げになりがちです。
プロダクト制作を軌道に乗せ、ビジネスとしてドライブさせるためにも、起業家はプログラミングを学ぶべきですよ」(中島さん)
とにかく人が面白い。G’sコミュニティの存在感
G’s ACADEMYのもうひとつの魅力が、共に新しい挑戦をする仲間がいる「コミュニティ」の存在だ。「仲間がいなかったら最後までやり遂げられなかった」と語る卒業生は多い。
HRテック領域のサービスを提供する株式会社Bloomの平原俊幸さんもその一人だ。
「実は、起業より何より、とにかくそれまでの日常を変えたくてG’sへの入学を決めたんです。そんな理由でしたが、G’sにいる人はとにかく面白い。
それまでいた環境では絶対に出会わないような経歴の人がたくさんいて、自分には到底できないレベルの課題を仕上げてくる。そんな刺激は初めてで、彼らに負けないよう頑張るうちに自然と自分の道も見えてきたんです」(平原さん)
「G’sにドハマリした」という平原さんの事業には、G’sコミュニティが存分に生かされている。共同創業者との出会いは平原さんの卒業発表会で、OB訪問のようにしてつながったG’s卒業生も入社した。なんと、Bloomの社員8名のうち5名がG’s関係者なのだ。
共通項はありつつ、自分にはないアプローチを武器とする人たちと組むことで、挑戦の場はぐっと広がる。「ライバルであり仲間でもあるという構図はなんだか第二の青春のようでしたね」という平原さんの言葉通りの環境が、G’sにはあるのだろう。
「私がそうだったように、30代半ばで仕事や人生にモヤモヤしている人は、ぜひG’sに入ってほしい。そういう気持ちをエネルギーにしてぶつけられる、悩んでいる人のほうが頑張れる稀有な場所なんです」(平原さん)
プログラミングは、挑戦する人の武器になる
コロナのような大きな環境の変化があれば、ビジネスパーソンの意識も変わる。起業や転職を検討した層からの需要も増えた。
そこでG’sでは、コロナ禍で迅速にオンラインとオフラインを併用した講義を実施。10月には、それを発展させた新ブランド『G’s ACADEMY UNIT_』を札幌に開講した。
しかし、コロナ禍では先述の「コミュニティ」がG’s ACADEMYの課題となった。
「オンラインでも授業の質を変えないことは、努力によって可能です。私たちの課題は、オフラインのコミュニティの熱量をどのようにしてオンラインでも維持するかということでした。
そこでG’s ACADEMY UNIT_では、講義は東京からのオンラインで実施しつつ、現地ではコミュニティマネージャーがコミュニティづくりをサポート。リアルで集まるカリキュラムも重視しました。
それによってオンラインでも現地のコミュニティが活性化され、同じ熱量が感じられるようになりました」(児玉さん)
恒例のハッカソンも、オンラインにシフトしたことで全国規模での開催となった。逆に、発表会は各地のコミュニティを活性化させる目的でオフラインで開催した。
G’sはたった数ヶ月で、オフラインの熱量とオンラインの利便性・安全性のバランスをとることに成功したのだ。
最近では、起業家を目指す人たちだけでなく、企業内の新規事業やイントレプレナー活動のためにG’sの門を叩く人も増えているという。社員のプログラミング学習に補助金を出す企業もあり、プログラミングをはじめとしたテクノロジーの力が「武器」として認識されはじめている。
「挑戦する際の大きな武器としてプログラミングを使い、どんどん自由に戦う場を広げてほしい。我慢をしたり、言い訳をしたりして、貴重な人生の時間を過ごしてもらいたくない。挑戦する人を支援したくてG’sを立ち上げました。
自分の使命に魂を燃やして前進する人が増えていくことは、私自身の『Why me?』でもあります」(児玉さん)
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