時代の半歩先を行くサービスで、旅行をもっと楽しんで欲しい
卒業生対談 望月大希「Pokke」× 角館浩太郎「pathlog」ジーズアカデミー
ジーズアカデミーのサイトにお越しになる「起業を目指す方」「エンジニアを目指す方」に向けて、役立つ情報をお送りします。
2016年3月、ジーズアカデミーの第2期生として26名が卒業しました。卒業制作発表の場である「GLOBAL GEEK AUDITION Vol.2」では、音声ガイドツアーアプリ『Pokke』を制作した望月大希さんが優勝。旅のアルバム作成、リアルタイム配信サービス『pathlog』を制作した角館浩太郎さんが次点で受賞しました。
今回は、望月さんと角館さんにジーズアカデミーで得たことを振り返っていただきました。ジーズアカデミーに入学した経緯や出会った同期メンバーとの思い出を お話しいただいた前編に続き、後編ではリリースしたサービスの内容や、受賞したときのことをお伺いします。

1990年生まれ、山梨県出身。サンフランシスコ州立大学国際政治経済学部を卒業。在学中に現地ベンチャー企業で長期インターンを経験し、テクノロジーに興味を持つ。卒業後は日本に帰国したのち、情報通信系の商社に入社。海外スタートアップの発掘や、日本市場へのローカライズ案件などに関わる。1年3ヶ月後に退職し、ジーズアカデミーに入学。アンドロイドプログラミングとサービス開発に注力する。「GLOBAL GEEK AUDITION Vol.2」にて、音声ガイドツアーアプリ『Pokke』で優勝。現在は友人と共同でスタートアップを立ち上げ、同アプリを展開中。
音声ガイドツアーアプリ『Pokke』
観光スポットを音声で案内する、多言語対応の音声ガイドツアーアプリ。スポットを指定してアプリを立ち上げると、自分専用の音声ガイドが、旅先をただ見て回るだけでは気付かないエピソードを解説してくれる。はじめは訪日外国人をメインターゲットとしたアプリを想定していたが、制作を重ねるうちに日本人が知らないエピソードが多くあることに気付く。そこで現在では、英語と日本語両方によるコンテンツ開発を進めている。

1984年生まれ、岩手県盛岡市出身。小学2年生のとき『FF5』にハマったことをきっかけに、人生の大半をゲームに捧げる事に。高校受験の浪人中にチャットブームを体験、次第にWebサイト制作に興味を持つ。その後、MMORPGや、2chのFlash・動画板でFlashムービー制作にハマりつつ、就職や引きこもり生活を繰り返すが、2011年の東日本大震災で実家の岩手にて被災したのを機に、かねてよりやりたかったWeb制作の道に進む事を決意。その直後、東京にいた友人に誘われ上京。制作会社、フリーランスなどを経て、現在はWeb制作会社でフロントエンドエンジニアとして働いている。
旅のアルバム作成、リアルタイム配信サービス『pathlog』
旅好きをターゲットとした、アルバム制作やリアルタイム配信サービス。旅行時に撮影した写真や動画をアップロードすると、GPSと撮影時間をもとに地図上にマッピングする。時間軸に沿ってアルバムを観覧することで、誰もが旅行を追体験できる仕組み。ユーザーは旅行に行く人であれば配信者、旅行に行く機会がない人は観覧者となって利用可能。動画も含めたリアルタイム配信により、家に居ながらにして、遠く離れた場所を旅する感覚を楽しめる。配信者と閲覧者間でチャットでのコミュニケーションも可能。
旅の経験がモノづくりのきっかけになった
−望月さんは、『Pokke』をどのようにして思い付きましたか?
望月)サンフランシスコに住んでいた学生のときに、アルカトラズ刑務所へ観光に行ったんです。そこでは来場者全員に「音声ガイド端末」が配られ、ガイドを聞きながら30分ほどかけて散策します。1回目は音声ガイドなしで、2回目はガイドありで施設内を巡ってみたんですが、ガイドを聞きながらの2回目ではじめて、受刑者が刑務所の壁をスプーンで掘って逃げようとした逸話を知りました。
まるで自分が物語の中にいるような感覚になり、歴史を追体験しているようでした。そのとき、「音声ガイドの有無で、こんなにも観光の面白さが変わるものなんだ」と衝撃を受けたんです。そこで、日本中の観光スポットの歴史をアプリで手軽に聞けたら、面白い観光体験を提供できるのではないかと思い付きました。
角舘)僕も実際に、『Pokke』をダウンロードして使ってみたんだよね。UIもとても良かったし、日本にある建物の歴史について音声で詳しく教えてくれるのがすごくいいなと思った。
望月)ありがとうございます。そうなんです、最初は訪日外国人向けにつくっていたので英語だけでしたが、今は日本語にも対応しています。プロダクト制作のために取材を重ねるうち、自国のことを知らない日本人がたくさんいるのに気付きました。思えば、僕だって明治神宮や日光東照宮の歴史を知っているかと言われたらほとんど知りません。でも機会がないだけで、きっかけさえあれば「もっと日本のことを知りたい」と思っている人もいるんです。そういう人にも気軽に使ってもらいたいと思っています。
サービスで使う原稿は自分たちで作成して、 翻訳する方と声優さんはクラウドソーシングから採用しています。はじめは声優専門の会社に依頼しようと思っ たのですが、めちゃくちゃ高くて制作コストが跳ね上がりました。そこでクラウドソーシングを覗いてみ たら、教育を受けたプロと変わらないようなレベルの方がたくさんいることに気づきました。英語版の声優さんは、やっぱりそれなりに高いんですが 、 全体的にかなり低コストで制作できています。
−実際に運用していくためには、費用対効果も考えないといけないですよね。それに言われてみると、私も日本について まだまだ知らないことばかりです。『Pokke』が自国の歴史を知る足がかりになってくれそうですね。角舘さんは、どんなきっかけで『pathlog』を思い付いたんですか?
角舘)僕は、一眼レフで写真を撮るのが趣味なんです。一昨年に行った台湾旅行でも、数千枚の写真を撮りました。自分が撮影した写真は、誰かに見て楽しんで欲しいですよね。そこで、写真を見ながら旅を追体験できるサイトをつくりたいと思ったんです。
でも、ただ写真を並べただけだと、いかにも「管理している」感じでつまらないじゃないですか。だから配信者も観覧者も楽しめるように、旅行をリアルタイムで追体験できる動画配信サービスも同時に考えました。
望月)僕も旅行が大好きで、1回の旅行で1000枚以上の写真を撮ります。でも結局、写真フォルダに溜まっていってしまうだけ。これって結構 “旅行者あるある” だと思うんですよ。それが『pathlog』では厳選した写真を時系列で並べられるので、土地ごとの印象的な場所をストーリーで思い出せるのがいいなと感じました。
△『pathlog』 時系列で写真を並べられる
まるでジョブズ! 準備をして臨んだ最高のプレゼン
−プロダクトが入賞したときは、どんな気持ちでしたか?
望月)入学したときは、そもそもプログラミングもわからない状態なので「自分のアイデアを形として残せるだけで十分」と考えていました。でも実際にプロダクトをつくりだして、「これはいけるんじゃないか」と自信がついてきたんです。卒業発表のときも、自分の部屋でプレゼンのリハーサルを20回以上しました。音声を録音したり、ストップウォッチで時間を測ったりして準備したので、正直、本番でも手応えは感じていたんですよ。
角舘)あのプレゼンは、すごかったよね。もう、本当にスティーブ・ジョブズみたいな感じだったんですよ。つかみからオチまで全部計算されているのが伝わって、よく練習したんだろうな、と感心しました。だから、モッチーの発表が終わった瞬間に「これはヤバイな」と。
望月)あの日は、気合を入れようとプレゼン直前にジョブズの映画を観に行ったんですよ(笑)。
角舘)そういえば、言ってたね。「アイスブレイクのために、今日はジョブズの映画を観に行って来ました」って(笑)。
望月)それで、僕のテンションも最高に上がっていたんです。プロダクトも6ヶ月間準備してきたものだし、プレゼンの練習もたくさん積んできました。だから受賞したときは、それを大勢の人に評価してもらえて嬉しかったです。
△ 優勝を勝ち取った望月さん伝説のプレゼン
角舘)そうだよね。僕は2位で、やっぱりめちゃくちゃ悔しかったんですよ。たぶん3位だったら諦めがついたんです。なのに「2位って」みたいな(笑)。よくオリンピックで、銀メダリストだけ元気がないみたいな表彰式があるじゃないですか。それまで「銀メダルはすごいのに、なぜだろう」と不思議だったんですけど、やっぱり銀では悔しいなと、そのときに思い知りましたね。
実は今年の1月に、僕が引きこもりだったときに心配してくれた祖父が亡くなったんです。僕は『pathlog』をつくるために、お盆もお正月も実家の岩手県に帰省しなかったんですよね。だから、なんとか1位を取って報告したかった。でも結果を母に伝えたら、「2位でも立派だって、じいちゃんも褒めていると思うよ」と言われました。だから、今はすごく誇らしい気持ちです。
それに当時の悔しさのおかげで、今のやる気にもつながっていますし、1位になったモッチーが起業したのを見て、「負けられないな」という気持ちにもなるんです。
サービスを連携させて新しい価値を生み出す
−最後に、制作されたプロダクトで今後はどのようなことを実現したいですか?
望月)僕は、とにかく日本のために何かをしたいと考えています。今は、2020年の東京オリンピックで日本が注目されていますよね。だけど僕たちの世代が考えなきゃいけないのは、その後の日本のことだと思うんです。オリンピックが終わって、海外からの注目が集まらなくなった後の日本をどうつくっていくのかが課題だと思っています。
なので『Pokke』を通して、訪日外国人をたくさん迎えられるような仕組みをつくりたいです。しかも、ただ観光して終わりではなく、日本の本質を知ってもらうことで、もっと好きになって欲しい。そして、また日本に来てもらうことを繰り返して、ほかの国に負けない観光立国にしていきたいです。
さらに、街全体をエンターテイメント化できたらいいな、と考えています。面白いスポットは、なにも観光名所だけではありません。もしかしたら、そのあたりの電柱が立っている場所が、実は明治維新の志士達が斬り合った場所かもしれませんよね。それを知ったら、「自分は今、歴史が動いた地点に立っている」とワクワクすると思うんです。
『Pokke』を、何でも教えてくれる少しお節介な「街歩きガイドアプリ」のようにして、たくさんのスポットやツアーをカバーしていきたいと思っています。
−『Pokke』があらゆる場所のガイドをしてくれれば、街を歩くのが楽しくなりそうです。角舘さんは『pathlog』で何を実現したいですか?
角舘)まずは、マネタイズの部分をもっと考えたいです。たとえば『pathlog』のサービスを発展させれば、ツアーのパンフレットとして使うことができます。今あるバスツアーなどのパンフレットでは、文字や写真だけでツアー内容が説明されていますよね。でもそれだと旅行者は、 リアルなイメージを膨らませにくいと思うんです。そこを 『pathlog』を使えば、ユーザーは順番に写真を追いながら、ツアーを時系列で直感的にイメージすることができるため、ツアーの楽しさがより伝わるのではないでしょうか 。
やはり最終的には、旅行にまつわる あらゆるサービスを『pathlog』に一本化 したいですね。海外に渡航している旅行者は、年間12億人ほど。そのほんの数%の人に『pathlog』を使って自分たちの旅の軌跡を配信してもらうだけで、世界中の旅行の記録を1日のうちに得られる計算なんです。疲れて家に帰ってきて、なんとなくテレビを付けて寝るだけはちょっと寂しいじゃないですか。そんなときに、パソコンやスマートフォンで『pathlog』にログインすれば一瞬で世界中を旅できるんですよ。
それに、モッチーは『Pokke』をいつかユーザー投稿型にしたい、と言ってたよね。お互いのアプリを連携させれば、ユーザーは写真の記録をつけながら、その観光スポットを自分の声でガイド できるようになると思うんだ。
望月)そのアイデア、いいですね。観光地を訪れたときの感動って、たぶん声にあらわれると思うんですよ。だから『Pokke』で自分の感情を声で残して、その声を『pathlog』でたくさんの人に伝えていくのは理想的ですね。「今、アラスカにいて、きれいなオーロラを見ています」という感動を文字だけではなく、「声」でも伝えられればインパクトがあります。
角舘)そうだね。こんなふうにジーズアカデミーで出会ったモッチーやみんなと、これからもアイデアを出しあいながら協力していけたらいいね。
望月)そうですね。それぞれのプロダクトをもっと大きくして、将来的に連携していきましょう。
-インタビューを通して-
入学前は、プロダクトのつくり方さえ手探り状態だった、望月さんと角舘さん。しかし今では、お互いのサービスを連携させるアイデアを思い付き、それを自分たちの手で実現できるスキルを身につけました。お二人の考えた「あったらいいな」というサービスが、私たちの旅の体験をより思い出深いものにしてくれそうです。
ジーズアカデミーでは、今回のお二人のようにプロダクトを自分の手でつくりだそうとする入学生を募集しています。ひらめいたサービスをカタチにするために、ジーズアカデミーで学んでみてはいかがでしょうか。
【前編はこちら】
仲間と出会えたことで、プロダクト制作を最後まで走り切れた|卒業生対談 望月大希「Pokke」× 角舘浩太郎「pathlog」ジーズアカデミー
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ライター:流石 香織
撮影・編集:齋藤 玲乃