〜誰もが風景に心癒される社会を創る〜(LandSkip代表 下村さん)(後編)
※前編はこちらから
「App Store Best of 2016」に卒業生が立ち上げたLandSkipが選出されました!
下村一樹さん
1987年北海道生まれ。北海道大学を卒業後上京し、新卒でApple Japanに入社。コンクリートジャングルに囲まれて働くなかで、都会では自然の風景を楽しめないと実感。コンサルティング会社を経て、風景を使ったコンテンツビジネスを立ち上げるためにプログラミング未経験だったが2015年4月にジーズアカデミーに第一期生として入学。株式会社ランドスキップを設立。スカパー!やApple TVへの映像配信、VR事業などを事業を展開している。
ー以前のG’sのインタビューで「なぜプログラミングを学んで自分で作ったのか」という質問で、「ユーザーが求めるモノをどうしても自分の手でつくりたい」と仰っていたのが印象に残っています。そういう点で、自分で技術を学んだからこそ、役立った所があれば教えてください。
アイデアを形にしていくにあたり、何がどれくらい大変なのかを知らずに意思決定するのはダメだと思っていました。日々の開発の要件を洗い出す時、実現したい機能はたくさんありますが、なにがどれくらい大変か、どれくらいユーザーに喜んでもらえるか。プログラミングを学んだことで、そこのリアリティが持てるようになりましたね。リアリティ はビジョンと同じくらい大事だと思います。
自分が本当に創りたいものだったこそ、まずは作ってみて、作ってみたからこそ、自分だけで作ることに限界も感じました。ビジョンと現状のギャップを埋めるために、「こういう技術のあるメンバーがいれば、さらに良いものができる」とクリアになりましたね。
ジーズで学んで自分で作る経験がなかったら、開発メンバーとの連携もうまくいかなかったと思います。結果的に細部にこだわれない、魂がこもらないプロダクトになっていたということですね。情熱のない事業、魂のないプロダクトには誰もついてこないですよ。だからこそまずは、自分の情熱をそそいで作ってみることが大切だと思います。
ー「ビジョン」と「リアリティ」と「技術的な壁」のバランスを取る上で、意識していることがあれば教えてください。
ディテールやソロバンから考えてバランスをとるというよりは、まずシンプルに「いいものはなんだろう。」というのを考えますね。
シンプルな基準でいいものをつくれば、世の中から受け入れられて、最終的には事業にできると信じています。
今ある限られたリソースの中で、どういうものに投資をしてつくると「どんないいものが生まれるか」を考えて、生まれるものにリアリティが持てて、「これはすごい、LandSkipの目指す『風景の流通』という世界に合っているよね」ということであれば実行しています。
ーすごいですね。G’s ACADEMYを卒業した後はG’s メンバーは起業支援等を受けられますが、下村さんは何を得ることができましたか?
細かいことはあげればキリがないですね。後になって振り返ると、本当の意味でのクリエイティブマインドはジーズで学んだと思います。
ビジョンを描いたら、それは人にお願いするものでもないし、与えられるのを待っているものでもない。「自分で手を動かしてつくるものなんだ」と、そういうマインドセットを地で学んだ感じですね。
もし「俺はビジネスサイドの人間だから」という考え方だったら、自分はいつまでたってもLandSkipを生み出せなかったと思います。
今はコードは書いてないけど、LandSkipのビジョンを実現していく事業をクリエイトしていくクリエイターだと思っています。
また、卒業後はD ROCKETSのオフィススペースを提供いただけて助かりましたし、Global Geek Auditionの発表がきっかけで仕事に繋がったこともあります。
あとは、何よりジーズでプログラミングを学んでいなければ出会えなかった人。メンターだった中農さんやLandSkipのメンバーはそこから始まっています。それは代表の児玉さん、山崎先生とか、新しいチャレンジをすることに前向きなジーズコミュニティの皆さんを含めてですね。「こういうことがやりたい」とLTしたら、「手伝うよ」と声をかけてくれたり、知識だけでなく背中を押して気持ちを高めてくれる。
そういった意味でも、最初のきっかけであるジーズがなければ絶対起こっていないようなチャンスがありました。
ー今は投資は受けていないんでしたよね。今後の展望としてはどのようにお考えですか?
そうですね。現在は100%自分が株を保有しています。キャッシュインだけで着実に事業を進めている状態ですね。ただ、必ずしもすべて自分だけでやりたいわけではないです。ビジョンを共有して、組んでいける企業や人とはむしろシェアを分け合って進めていきたい。このビジョンを絶対に下村の趣味では終わらせないぞと。
やはりビジョンで霞を食って生きていますではなく、強いビジョンには強いリアリティがあって、そのリアリティの部分がビジネスだと思っています。
世の中に価値のあるものを作っているから、自信を持ってビジネスに変えて自信を持ってお金に変えていくと。
創業してあと少しで二年になりますが、そのビジネスの所で一回転はできたのかなと思っています。
ー起業を考えている人へのアドバイスをお願いします。
僕は最初、サラリーマン時代の貯金500万円を資本金に事業を始めたのですが、最悪それが失敗したとしても、「自分が欲しい最高のものを500万円でつくれた」そう考えたらそれだけで十分ハッピーだよねという気持ちだったんです。
やりたいことを自分のお金で、誰からも口出されずにやると。リスクでもなんでもなく、これ以上の贅沢な挑戦がありますか!そういう発想でも起業は考えていいと思います。
自分の好きなことを後悔しない形でやり通すという経験は、間違いなく自分の資産になると思います。
残念ながら失敗したとしても、起業したことで得られる経験や能力は、今までの延長よりもキャリア的にも上がるはずだし、自分の人生を後悔しないはずです。自分の最期で「自分のやりたいことにチャレンジしたぞ」と思える方が格好いいかなと思った。自分の心に素直に従うというのも大事だと思うんです。
そういう所でのリアリティを持ちつつ、なんとかビジョンの実現に向けて頑張っています。
ーありがとうございました。